中高年の方の健康増進をサポートする中高老年期運動指導士の資格について、取得条件や難易度、活躍の場などを解説します。
公益法人日本スポーツクラブ協会が運営する「中高老年期運動指導士」は民間の資格になります。健康維持や生活の楽しみを目的として運動に取り組む中高老年期の方を対象に、運動方法や健康管理方法を指導するための資格です。
正しい知識を学ぶことで、運動によるケガや間違った方法による不具合を防ぐことが目的とされています。平均寿命が伸びている現代日本で、健康な日常生活を送るための「健康寿命」を伸ばすサポートや指導を行います。運動だけでなく食生活習慣による健康維持、ケガの対処なども総合的に学びます。
中高老年期運動指導士は、公益財団法人 日本スポーツクラブ協会(JSCA)が主催する講習会に参加することで取得できます。対象となるのは満18歳以上の方で、必須資格や実務経験などは問われません。
講習は2日間で、生涯スポーツを楽しむための考え方や中高老齢期の身体の特性、健康維持のための食習慣などを学びます。講習会の最後にレポートを提出して、理解に問題がなければ合格証が送られてきて取得できます。講習内容は大学教授や民間企業の有識者による講義のほか、テーピングなどの実技も。単に資格を取るためだけの内容ではなく、パーソナルトレーナーとして現場で活かせる技術も習得できるでしょう。
受講資格は年齢制限のみとなっているため、未経験でこれからパーソナルトレーナーとして活動しようと考えている方も臨みやすいといえるでしょう。講習も2日間と比較的短く、レポート提出のみで試験はないため取得しやすい資格です。ただし東京・大阪のみの開催となっているため、地方在住の方は少し受講ハードルが高いかもしれません。
高齢化が進む日本において、中高老年期運動指導士資格が活躍する場はこれからも増える可能性が高いです。老人ホームやリハビリ施設での運動指導のほか、民間のスポーツジムでも高齢者向けの運動プログラムを実施しているケースもあります。高齢者の健康維持にかんする需要は年々高まっているため、今後も活躍の場は増えていくでしょう。
体力が衰えてケガをしやすくなる中高老年期は、若いときのように運動すると不調を起こすケースがあります。特にいきなりジョギングやウォーキングを始めると、ヒザや腰をケガして慢性的な痛みを抱えてしまうケースも。ケガからの回復を目指すリハビリも、自己流で行うと余計悪くなってしまう可能性があります。
こうしたケガや不調を防ぐため、正しい知識を持った中高老年期運動指導士が適切な運動計画を立てる必要があります。
中高年になると体が変化するため、若いときと同じ食事を摂っていると肥満や塩分の取りすぎの可能性があります。食事の乱れは不健康の元になるため、中高老年期運動指導士が適切な食事メニューを指導することが必要です。食事で体を良い状態に保つことで、運動によるケガや不調を防いで効果を高めることにもつながります。
骨や関節の強度が落ちる中高年期は、運動中にケガをしてしまう可能性も高まります。介護施設やスポーツジムでケガが発生したとき、適切な応急処置で被害を抑えるのも中高老年期運動指導士の大切な役目です。打撲や脱臼、骨折といった外傷のほか、止血や心肺停止の対処など緊急性の高いトラブルにも対応します。救急車が到着するまでの間に適切な応急処置を施せれば、命を守ることにつながります。
身体づくりやケガの防止・回復に取り組む中高年への運動指導では、運動自体を楽しめるようなコミュニケーションサポートも大切です。人と話すのが好きな方、励まし上手な方は中高老年期運動指導士に向いているといえるでしょう。
一口に高齢者といっても、定年後の身体づくりやリハビリなど目的やモチベーションはさまざま。コミュニケーションをとってその人の目的を把握し、適切な運動指導や会話サポートが必要になります。高齢者にとっては会話自体が健康づくりにもなり、楽しい気分で運動が長続きする効果も期待できるでしょう。